■オーバーロード・継承・オーバーライド
はじめに
この章では、javaの便利な機能について学びましょう。現場で必ず使う機能になるかと思います。
とっても便利なので使いまくりです。
基礎となる処理を呼び出したり、それに上書きできたりする機能です。
まずは触れてみて、理解を深めていきましょう!
Step1: オーバーロード
引数の型や数が異なる同名のメソッド又はコンストラクタを 複数記述すること です。
呼び出す場合は、引数の型や引数の数が同等な メソッド 又は コンストラクタ が呼ばれ処理を行います。
こんなややこしいものが必要な理由は一つ、便利だからです!
利用者の入口(メソッド名)は同じだけど、
引数によって最終的な処理結果を変更したり、処理結果にバリエーション持たせたりすることが可能です!
オーバーロード: メソッド
public class Sum { public int plus(int a) { return a + 1; } public int plus(int a, int b) { return a + b; } public int plus(int a, int b, int c) { return a + b + c; } }
オーバーロード: コンストラクタ
public class Sum { private int a; private int b; private int c; public Sum(int a) { this.constructor(a, 0, 0); } public Sum(int a, int b) { this.constructor(a, b, 0); } public Sum(int a, int b, int c) { this.constructor(a, b, c); } private void constructor(int a, int b, int c) { this.a = a; this.b = b; this.c = c; System.out.println("abc = " + (this.a + this.b + this.c)); } }
補足
- ・デフォルトコンストラクタ
- 通常コンストラクタは、そのクラス内に何も記述しなければ デフォルトコンストラクタ が用意されます。
(※コード上にはないが、実処理(new クラス名
)のタイミングで空のコンストラクタ(public Sum() {}
)を呼び出している状態となります。 - ・オーバーロードを活かしたコンストラクタ
- 冗長な記述を減らし、可読性の高い初期化処理の実現に役立ちます。
しかし、以下の場合はコンパイル時点で エラー (再帰的コンストラクター) を吐いてしまい、
思ったような処理を実現することができません。
【サンプル: コンストラクタ内で自クラスのコンストラクタを呼び出す】
... // ① public Sum(int a) { this(a, 0, 0); // ←こちらはOK } // ② public Sum(int a, int b) { this(a, b, 0); // ←こちらもOK } // ③ public Sum(int a, int b, int c) { this(a, b, c); // ←こちらを記述したタイミングでエラー }
エラーの原因は、 自分自信のコンストラクタ(③)を呼び出すことによる処理の終結が無いこと です!
①、②は③を呼び出し、③は③を呼び出します。
①、②は結局③に行き着くため、③のコンストラクタを読んだ状態と同じになります。
これでは、永遠にコンストラクタの処理が終わりませんよね?
そのため、3つのコンストラクタ内で共通で使用できるメソッド( constructor()
)を用意し、
一つの口で初期化できるようにしている訳です!
※「再帰」というのは、端的に言えば、自分自身を呼び出すことを意味します。
Javaだけでなく、多言語で使用されるテクニックですが、ここでは紹介程度にしておきます。
例題
下記に示すプログラムを作成し、実行しなさい。
※課題の提出の必要はありません。
Sum クラス
public class Sum { public int plus(int a) { return a + 1; } public int plus(int a, int b) { return a + b; } public int plus(int a, int b, int c) { return a + b + c; } }
SumMain クラス
public class SumMain { public static void main(String[] args) { Sum sum = new Sum(); int sumValue = sum.plus(1, 2, 3); System.out.println(sumValue); } }
Step2: 継承
継承 とは、任意のクラスを 他のクラスで受け継ぐこと です。
任意の 元のクラス を スーパークラス 、 受け継ぐクラス を サブクラス と呼びます。
継承することによって スーパークラスの持ち物であるフィールドやメソッド が サブクラス で使用することが可能となります。
但し、スーパークラスのフィールドやメソッドのアクセス修飾子がprivate
の場合、
継承してもサブクラスで使用することはできませんので注意してください。
private
以外の場合、サブクラスで使用することが可能です。
Step3: 継承の方法
継承するには、 extends
を記述します。 extendsとは、 拡張する という意味です。
public class サブクラス名 extends スーパークラス名 { ...
クラスの宣言文は、 「クラスxxxは、スーパークラスSSSを拡張する」 といった感じで読むことができます。
但し、 継承できるクラスは1つのみ
です。 複数のクラスを同時に継承したりすることはできません。
継承のメリット
・同じような機能をもつ重複したコードを書かないようになるので、コードの再利用性が高くなる
・メソッドを追加したり、オーバライド(上書き)することができるので自由に拡張する
重複したコードを書くと勘違いやミスが増え、
思わぬバグやトラブルを起こしてしまう可能性があり、メンテンスが難しくなります。
メンテナンスが難しくなることによって、「機能の追加」や「改善」が難しくなり拡張性が下がってしまいます。
効率よく少ないコードでプログラミングしないと、開発がどんどん難しくなり、コードを書くプログラマーも
苦しくなってきてしまいます。
例えば・・・
こんな小難しい事言われてもわかりづらいですよね・・・
継承を用いる場合は、「骨組み」となるクラスを1つ作り、その1つのクラスを継承するのが一般的です。
具体例では、 「RPGのキャラクター」 があります。
初期のキャラクターをスーパークラスとして、継承して戦士クラスとか魔法使いクラス などを作るイメージです。
そうすることで、戦士であれば剣を使う部分だけ、魔法使いであれば魔法を使う部分だけ、
つまり必要最低限のコードを、追加するだけでプログラミングができてしまうのです。
Step4: オーバーライド
オーバーライドとは、継承関係において スーパークラスのメソッドの処理をサブクラスの同名のメソッドで上書きすること です。
継承関係以外では、この現象は起こりません が、継承するサブクラスを作成するときは、
多少スーパークラスのことを知らないと意図せずオーバーライドしてしまうことがありますので注意してください。
Greet クラス
public class Greet { public void morning() { System.out.println("Good Morning"); } }
GreetInJapaneseクラス
// extends Greet で Greet コントローラを継承 public class GreetInJapanese extends Greet { // morningメソッドをオーバライド(上書き) public void morning() { System.out.println("おはようございます"); } }
GreetMain クラス
public class GreetMain { public static void main(String[] args) { GreetInJapanese jp = new GreetInJapanese(); jp.morning(); } }
【出力結果】
おはようございます
解説
- ・
morning
メソッドを継承先クラスである GreetInJapanese で上書き - 継承先のクラスにて スーパークラスの持つメソッドの処理 を上書いています。
Good Morning
を表示したければ、下記のようにします。
サンプル: オーバライド その2
public class GreetInEnglish extends Greet { public void morning() { // スーパクラス(Greetクラス)の morning メソッドの呼び出し super.morning(); } }
解説
- ・
super
キーワードを指定してのmorning()
メソッドの呼び出し - こうすることでスーパークラスであるGreetクラスの
morning()
メソッドが呼び出されます。
オーバーライドの利用例として、 特定のサブクラスにおいて、当該メソッドの処理内容を修正・変更する という利用例があります。
【例: 既存クラスのメソッドの処理内容を変更したい場面】
このとき、そのスーパークラスのメソッドの処理内容を直接修正することが可能だったとします。
(※今回の場合は、 morning()
の System.out.println("Good Morning");
部分を指します。
しかし、他のクラスでもそのクラスのメソッドを使っている可能性は否めません。
そのため、そのメソッドを修正したことによって他のクラスに影響が出る可能性があります。
上記サンプルの Greet で言えば、
GreetInJapanese 以外のオーバーライド先の処理内容として、
良い朝ですね!
などと出力するようにしている場合です。
そのような場合は、スーパークラスのメソッドを直接修正せず、
クラスを継承したサブクラスを用意して当該メソッドをオーバーライドし、
処理内容を修正(上書き)することで、
修正内容をサブクラスのみに適用することができます!
つまり、
- プログラムの影響範囲を限定する
- コードを再利用する
という2点に重きを置いた実装方法になります。
大本は変えず、使用先のみに修正や変更を加えよう!ということです。
RPGの例で考えよう
具体的な使い方について触れていきます!
継承したサブクラスでは、スーパークラスのメソッドを使うことができます。
新しく追加して機能を追加することもできますが、実はスーパークラスのメソッドを「上書き」することもできます。
スーパクラスのメソッドをサブクラスで上書きすることを「オーバーライド」といいます。
このオーバーライドが継承を使う上でもっとも重要な機能 となります。
具体例としては、
- ・RPGのキャラクターが行う特定のアクションを上書きする場合
- オーバーライドはRPGのキャラクターが行う特定のアクションを上書きする場合によく使います。
攻撃する処理を書いたメソッド( attack()
)をオーバーライドし、
「忍者は通常攻撃で一定確率で即死攻撃」
「白魔道士は攻撃で回復を行う」
といった具合で上書きするようなイメージです。
// 忍者 クラスの場合 public void attack() { // 一定確率で即死 にする処理を実装 } // 白魔道士 クラスの場合 public void attack() { // (攻撃だけど)回復を行う }
これも上記のように「一定確率で即死」「回復する」などの違う部分だけをプログラミングするだけで済みますし、
同じメソッドを使っても実行するクラスによって違う動作を行うようにできます。
こちらの方が効率よくプログラミングすることができますね!
課題
Java2章からはEclipseでの課題対応となります。
※ プロジェクトの作成方法については Eclipseの使い方 を参考にしてください。
プロジェクト名・・・ 2-3
パッケージ名 ・・・ study (java クラス作成時に設定してください。)
Java クラス名 ・・・ Main.java、Task.java、Calculator.java (下記コードをコピー)
Main.java
package study; /** * * 本課題では、継承・オーバーロードメソッドの基本的な使い方を学んでいきましょう。 * 課題は問①から問③まであります。 * 指定された値と変数名を守って記述してください。 * * @author s.nanaumi */ public class Main { public static void main(String[] args) { // ③ Taskクラスのインスタンスを生成し、「doTask()」メソッドを呼び出しなさい。 } }
Task.java
package study; // ① TaskクラスにCalculatorクラスを継承させなさい。 /** * タスクの実行 */ public void doTask() { // ② Calculator.javaのすべてのオーバーロードメソッド「plus」に適当な引数を与え、下記画像のよう出力されるようコーディングしなさい。 // 尚、「どのクラスから呼び出しているか」を明確にするため、plus()には呼び出し元のキーワードを付与すること。 } }
Calculator.java
package study; public class Calculator { protected static int plus(int a) { return a + 1; } protected static int plus(int a, int b) { return a + b; } protected static int plus(int a, int b, int c) { return a + b + c; } }
以下の添付画像のようにコンソールへ出力されるよう課題を実施し提出してください。
※Plus.javaのオーバーロードしているplusメソッドを3つを呼び出して、それぞれに適当な引数を与えて表示させてください。
課題を提出するときには、「2-3」ディレクトリ配下にあるすべてのファイルをコミット、プッシュしてください。